渋滞情報をクラウドで「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティング


12/18もAMN主催の「次世代交通情報を考える」ブロガーミーティングに参加してきました。
UBIQLINKの「全力案内!」サービスに関するイベントということでしたが、ベンチャー系のサービスかと思っていましたが、野村総合研究所の100%出資子会社ということでITSに関するしっかりとした技術的な説明がありとても興味深かったです。
私は車を所有していないのでサービス自体にはあまり感心がなかったのですが(苦笑)、ITSの世界の動向、プローブ交通情報、カーナビの仕組みなどとても勉強になりました。



UBIQLINKは野村総合研究所が交通情報の社会インフラを作りたいと立ち上げた会社で、ITSの専門家や某小売のシステムを手がけてきた方などが集まっています。
最初のサービス「全力案内!」はGPS付き携帯やiPhoneで提供されているナビサービスで、サービスメニューはありがちなナビサービス風ですが、独自の交通情報であるプローブ交通情報(渋滞情報)を使って精度の高い最適ルート案内、出発時間の逆算ができるのが特徴です。携帯版は210円と競合と比べても最安で約20万人の会員がいるらしい。
将来的には、交通情報を業界横断的に、カーナビメーカーやカーメーカー、配送/物流業者、地方自治体/道路情報提供事業者等に提供していくビジネスを狙っているそうです。

交通情報としては日本ではVICSが有名ですが、その仕組みとか全く知らず、固定センサで収集/分析しFM多重放送で県単位に送られているんだとか、じつはカーナビ価格にVICS利用料が含まれているんだとか初めて知りました。欧州や米国もFM多重放送で提供と同じような感じ(欧州はパトロールカーによる人海戦術で収集)なのですが、最近の傾向としては車載機からの情報(プローブ情報)を活用しているとか。




実家の車に乗っている時に、渋滞していてもカーナビには他の道の渋滞しか表示されていないなと思っていましたが、カーナビで案内可能な5.5m以上の道の8%程度の幹線道路しか固定センサが設置されておらず、情報提供されていないそうです。まあ、渋滞しない道もあるだろうから渋滞情報としてどれくらいのカバー率になるのか良く分かりませんが。
このVICSを補完するために、各自動車メーカーや一部のカーナビメーカーでは自社のカー情報サービスでプローブ情報を収集しているそうですが、UBIQLINKではタクシー車両と全力案内!サービス利用携帯電話からプローブ情報を収集しています。
タクシーは脇道を通って渋滞を回避して走る、24時間走っているので、マイカーから集めるよりより有用な情報が集まるとか。11500台のタクシーの位置情報を分単位でリアルタイムに収集/分析しているので、より最適な道案内や時間の予測が可能になっているそうです。
タクシー会社はアナログ無線からデジタル無線への置き換えが進んでいて、配車のために位置情報システムもかなり高度化しており、リアルタイムの情報収集も実現できたとか。そういえば確かに最近タクシーは配車指示のアナログ無線が響いたりしなくなりましたね。
携帯からの情報収集はまだまだ数が少ないので有意な情報になってないそうですが、カーナビ等に採用され情報量が増えればより正確な情報に繋がりそうです。
こういう情報の異常データの削除、マップマッチングし、所要時間をリンク上にリアルタイムにマップできるようになっています。このリアルタイムの情報をベースに、直前の情報と組み合わせて予測したり、過去の統計情報から予測したりした情報を組み合わせ(もちろんVICSの情報も使って)、道案内のルートを選んでいるとか。結構詳しく教えて頂きとても勉強になりました(公開されていない情報らしく詳しくは紹介できないです)。



実際、この情報によるルートとVICSだけによるルート、最短距離のルートを走る実験をしたところ、平均19%最大33%の時間短縮、所要時間の誤差は約1/3、燃料消費量削減効果平均14%最大24%になったらしい。渋滞を回避できて快適というだけでなくエコにも繋がると。
iPhone版の「全力案内!」は現在無料で、走っている方向に向けて地図が回転したりする(位置情報から判断しているので回転するのはちょっと遅いですが)のが面白いです。カーナビはiPhoneのアプリで提供したらだめになっていたような・・と思っていたところ、音声ガイドやオートリルートがないためカーナビとは言えないそうな。(あと無料なので有料のVICSの情報は使っていないらしい)
いままでのカーナビが端末に持っている道路情報とVICSによる公的交通情報で、ルート検索し案内していたのに対し、「全力案内!」は走っている車からの位置情報(プローブ情報)をセンターで分析し、ルート検索要求応じてルートを作成し端末に送るというようになっています。これは交通情報の量が多いため端末で処理するには重くなりすぎるためだとか。
群衆(Crowd)の力で情報を集め、センター(Cloud)でサービス提供するという最近のネットのモデルのような感じすね。ただ、質疑でも出ていたように、通信できないところではナビできないというのでは、道路案内としては致命的だと思いますので、既存のカーナビのやり方とのハイブリッドになって行くような気がします。



携帯サービス特有の機能として、友人と位置情報やコメントを共有する機能を提供していたり、ルートの軌跡と写真等の地図上での表示とかもできるそうです。ありがちといえばありがちですが、カーナビとネットのサービスが融合したりマッシュアップできたりすると面白いことができそうです。
ぜひB2Bで稼いで、コンシューマ向けサービスは無料化したりAPIを提供したりしてもらえるとうれしいのですが。
この会社を立ち上げるずっと前から全国のタクシー会社を回って交渉してきており、小売りやカーメーカーなどとも話をしている。でもユーザの声を直接聞きたかったのでこのコンシューマ向けサービスを立ち上げたという懇親会での言葉が印象的でした。
UBIQLINKおよび野村総合研究所の皆様、AMNの皆様、貴重な話を聞く機会を頂き、ありがとうございました。

saya: