ヤマハ掛川工場でグランドピアノ製造を見学 ピアノは職人の技でできている #ヤマハカート

ヤマハ発動機さんの招待でヤマハリゾートつま恋でレーシングカートを体験したあとは、ヤマハ掛川工場の見学に連れて行っていただきました。
妻がピアノを弾くので、うちにはアップライトピアノですが、YAMAHAサイレントアンサンブルピアノYU5SXGがあったりします。かなり高価でしたが、今回、工場でグランドピアノの製造を見て、ピアノが高い理由が分かりました。天然素材の個体差を職人が見事に吸収して、さらに楽器としての完成度を高めるという、量産品の工場とは思えない手間と技が印象的でしたので紹介します。
ショールーム以外の工場内は撮影禁止で、ヤマハさんから提供いただいた写真を使用しています。


ヤマハ掛川工場ハーモニープラザを入ったところはショールームになっています。


医療機械の技師だった山葉寅楠(やまはとらくす)は、1887年当時修理すら海外でしかできなかった小学校のオルガンの修理を手がけ、さらに国産化しようと浜松でオルガン製作を開始。
東京音楽取調所(現東京芸術大学)伊沢修二氏の審判を受けるために、オルガンを天秤棒でかつぎ東京まで箱根を越えて運んだそうです。
写真はその時の様子のレリーフ(ヤマハリゾートつま恋にあったもの)。最初は調律ができていなくて散々な評価だったそうですが、調律法を学び、第2号機を完成させ、評価を得たそう。


この足踏みオルガンは1907年頃のもの。ちゃんと今も音がなります。


山葉寅楠は国産初のアップライトピアノ・グランドピアノの製造も手がけ、1904年にはアメリカ・セントルイス万国博覧会にピアノ・オルガンを手品して、名誉対象を受賞したとか。
写真のピアノはヤマハのピアノ製造初期のグランドピアノ。国内の博覧会で最高褒章を受賞し、たまたま巡幸されていた明治天皇が気に入って購入、皇室にあったものとか。85鍵しか無いそう。まだ音は鳴ります。近代化産業遺産に認定されています。


当時の社名は日本楽器製造株式会社で鍵盤の上にも「Nippon Gakki Seizo Kabushiki Kwaisha」と書かれています。Yamahaはブランド名だったそう。


鍵盤は象牙製で吸湿性があり滑りにくいのだとか。写真では分かりにくいですが、象牙は指紋のような模様が見えるのが特長。


ピアノ登場以前は、チェンバロという楽器があり、鍵盤を押すと弦を弾くようになっています。
ただ、これだと鍵盤の押す強さにかかわらず、同じような音量しか出ません。


ピアノの場合はこんなに複雑な機構で、鍵盤のタッチの強弱速さなどに応じてハンマーが弦を叩くようになっています。
さらにダンパーで音を止める機構やダンパーペダルと連動してダンパーを作用させない機構などもあり、とても複雑になっています。


アップライトピアノの方はハンマーを戻すのに重力が使えないのでスプリングで引っ張るようになっています。そのため、連打の限界は秒7回程度で、グランドピアノの半分程度とか。


さていよいよ、グランドピアノのできるまでですが、前半は映像で、後半は工場見学で説明していただきました。
まずは、響板作り。弦を叩いた音が響板で広がるので、ピアノのとても重要なパーツだそう。
マツ科のスプルースを製材、良いところだけを選別して、木目も合わせて並べる。隣り合う板が違えば響きが変わるそうで、何年も経験を積んだ職人さんにしかできない技なのだそう。


曲練支柱の製作。何枚もの薄い板を方に合わせて強い圧力をかけて曲げて接着します。


支柱の組み立て。曲練支柱に直支柱をアリ組という凹凸で組み合わせる工法で取り付けます。


塗装して磨き上げます。


フレームの製作。ヴァキュームプロセスという、砂をフィルムで包み込み真空状態にすることで固定し鋳型とする精度の高い鋳造製法を使っているそう。


鋳型に鉄と他の金属を配合したものを流し込みフレームを製作。


フレームは16トンから20トン近い弦の張力を支える必要があるため頑丈でないとダメで、100~150kgにもなるそう。

ここから先は、工場で見学。ピアノの素材は木なので、湿度の管理が重要なため、外の空気が直接工場内に流れ込まないように、工場には外扉と内扉があり、同時には開かないようになっています。
工場内はかなり大型の機械が多く、とても大きな音がしています。ピアノはベルトコンベアで運ばれたり、ロボットが運搬したりしています。

まずは、このフレームを本体に取り付けます。
さらに、チューニングピンを打ち込みます。ここはとても力が必要になる作業であるため、ロボットが自動的に行います。


張弦。約230本の弦を一本ずつフレームに張っていきます。
オシロスコープで音階を確認しながら張力のバランスを整える調律をします。張力は落ち着くまでしばらく時間がかかるので、ここでは機械で実施して技術者が細かく追い込むことはしないそう。


鍵盤とアクションの取り付け。
鍵盤やアクションは木製であるため微妙な差があるので、鍵盤の高さや弾いた時の深さなどを調節します。レーザー測定で誤差を薄い紙で微調節したり、部品の連結やアクションの動きを整えたりします。

シーズニング。ピアノは日本向けや欧州向けなど一定の環境下に置いて弦やアクションを慣らします。こういう工程があるように、全然違う環境向けのピアノを使うと環境変化でひずみが出るため良くないとか。
シーズニングのあとは外装の取り付け。大屋根や脚、ペダル等を取り付けます。


仕上げの調律・整調。ハーモニーを聞きながら行う調律やアクションの調節を行います
シーズニングなどで狂いを調整し、さらに楽器としての完成度を高めるための、技術者が自分の耳と目で調節していきます。
ダンパーの調整も行います。


整音。硬いフェルトでできているハンマーにピッカーを挿して、硬さを調節して良い音色を作っていきます。本当に究極の職人技ですね。

最後に品質検査があり完成です。

完成したグランドピアノは選定室に3台並べられ、購入されるお客様がそれを弾き比べて購入されるとか。同じ型のピアノでも材質の個性や技術者の感性で音の硬さや広がりなどに微妙に違いが出るそう。さらに経年変化で音も変わるとか。
実際聴き比べると、少し派手な音だったり、柔らかい音だったり微妙な違いが感じられました。

ちなみに掛川工場では1日あたり約30台のグランドピアノと約50台のアップライトピアノを生産しているそうです。


工場見学した人限定のハンマーの記念品が頂けました。


ショールームには色々なピアノや楽器が展示されています。
こちらは最高級モデルCF。


スヴャトスラフ・リヒテルが使用していたピアノにはサインが。


小室哲哉スペシャル EXPO PIANO


ハイブリッドピアノAvantGrand


リモートライブで世界中でエルトン・ジョン・ライブを実現したピアノ

工場という響きとは違う、素材の個性を最大限活かして良い味をつくり上げていく料理職人のようなこだわりが感じられるグランドピアノ製造現場の見学でした。
一般の方でも予約すれば無料で見学できるようですので、興味のある方はぜひ現場をその目で確認してみて下さい。

ヤマハ掛川工場のグランドピアノ工場見学

ヤマハ発動機の皆様、レーシングカート体験にピアノ工場見学ととても興味深い企画をありがとうございました。また、楽しい企画を期待しています。参加のブロガーの皆さんもありがとうございました。

saya: