箱根のポーラ美術館で開催中の企画展「Modern Beauty – フランスの絵画と化粧道具、ファッションにみる美の現代」について、担当の学芸員さんから本展で表現したい内容を解説して頂きました。
何気なく展示を見るのではなく、そういった解説を伺いながら観賞するととても勉強になりますね。その想いを簡単ですが写真とともに掲載します。
掲載作品は特別に許可を頂いて撮影しています。
本企画展を担当された学芸課長の岩崎余帆子さん
フランスの19世紀後半から20世紀へのファッションの変遷を、当時の絵画とドレス、装身具、ファッション誌、化粧道具など、様々な角度から展示。ファッションの変遷を空気感で感じて欲しいと語られていました。
ちなみに展示されているドレスは文化学園服飾博物館の協力。
ルイ=ガブリエル=ウジェーヌ・イザベー
テュイルリー宮殿庭園のマティルド皇女
19世紀半ばのファッションはナポレオン3世の皇后ウージェニーの宮廷を中心とした華麗なファッションが流行。ロココ時代の腰枠クリノリンで裾を広げたクリノリン・スタイルのドレスを蘇らせたそう。
19世紀は産業革命によって環境が大きく変化した時代。鉄道で行楽に行くようになった時代。
パリ万博も開催され、ファッションも多様化。
ファッションリーダーも宮廷から貴族、高級娼婦、女優などに。
マネが描いたジャンヌ・ド・マルシーは女優で高級娼婦。自らドレスや帽子でモデルをスタイリングして描いていたそう。
化粧をした肌の感じを美しく表現するために、キャンバス地にパステルで描かれている。
クリノリンスタイルは裾が全体的に広がっていたが、バッスルスタイルは後ろだけ広がっている。共にコルセットでウェストが非常に細くなっている。
ルノアールは仕立て屋の父を持つファッション一家でモデルに着せているドレスも自前のドレスだとか。
こちらのモデルも同じドレスを着用している。
扇は恋愛のコミュニケーションツールで、扇を使った動作で意思を伝える「扇ことば」があったそう。
エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン
母と子(フェドー夫人と子供たち)
化粧道具は28点もあり、アルコールランプの熱で髪の毛をカールさせたりしていたそう。
旅行用の化粧ケース
上下水道が普及していない時代の入浴は贅沢なもの。香水が普及していたのもそのせい。
画家は人目にふれない日常も切り取るように。日常の浴室、身繕いなどを行う女性も絵画のモチーフに。
その当時の沐浴に使われた陶器の洗面器も展示。
ファッションに関する情報や風俗は手彩色された版画から、
ファッション雑誌
フェミナ(1917.6)
ヴォーグ(1929.3)
印刷技術の発展でファッション雑誌も刊行。
雑誌には流行のドレスや髪型、装身具などが書かれた銅版画や石版画に手彩色を加えたファッションプレートが入っており、流行がパリからヨーロッパ各地に広まっていったそう。
ベル・エポック期のウエストをきつく締めたS字スタイルのドレス。大きな羽根付き帽子は流行のファッションアイテム。
アール・デコのドレス。コルセットから解放され、スポーツ、乗馬、旅行など女性の社会進出とともに自由で活動的なファッションへ。
さらに第一次世界大戦で、女性が働くようになり、働きやすいファッションも。
丈の短い赤いドレスは1920年代の流行。
この他も作品やアイテムが盛り沢山。
時代でファッションが変遷する様子とそれを描く絵画、当時のファッションアイテムなど、とても興味深く観賞できました。
企画展は9/4まで開催されていますので、興味ある方はぜひ見に行って下さい。
4月から8月まで毎月第3土曜日には担当学芸員のギャラリートークも聴けるそうですよ。
その他、6月には香水づくり講座なども予定されているそうです。
常設展の方もモネやピカソなど著名な画家の絵があり、楽しめました。
子供の頃、油絵を習っていたのですが、この絵模写したことがあります。
日本の作品や工芸品も展示されています。
ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで) 年中無休(臨時休館あり)
入館料:大人 ¥1,800、大学・高校生 ¥1,300、中学・小学生(土曜日無料) ¥700
アクセス:小田原駅、箱根湯本駅から直通バスあり。詳しくはこちら。