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夏休みに電子書籍で買っていた朝井リョウ著の『イン・ザ・メガチャーチ』を読みました。第23回本屋大賞をはじめ、さまざまな賞を受賞している話題作です。
「推し活」がテーマの小説だと聞いて読み始めたのですが、実際に描かれていたのは、もっと深く、そして少し怖い物語でした。

人の心を動かし、ときには人生そのものを狂わせてしまう「物語」。その力が、人を救うこともあれば、危うい方向へ導いてしまうこともある。そんな「物語」の功罪が、圧倒的なリアリティで描かれています。

登場するのは、世代も立場も異なる3人。
とあるアイドルグループの運営に関わることになった、レコード会社勤務の男性・久保田。
内向的で繊細な気質を持ち、大学での居場所のなさや、日々の心労、孤独を「推し活」によって埋めようとする久保田の娘・澄香。
そして、仲間たちと楽しく若手舞台俳優を応援していたものの、ある報道や「推し」の死をきっかけに状況が一変し、やがて陰謀論などに傾倒していく35歳の女性・隅川絢子。

物語は、この3人それぞれの視点から進んでいきます。
3人に共通しているのは、何かを信じ、何かに居場所を求めていること。現代社会では、かつてのように誰もが自然と所属できるコミュニティや、心の拠り所があるとは限りません。そんな中で「推し活」や「コミュニティ」は、自分を支えてくれる大切な場所にもなります。
一方で、そこにのめり込みすぎると、外側にいる人からは「どうしてそんなことになってしまうの?」と思ってしまうようなところまで、人は簡単に行ってしまう。
本作が怖いのは、その過程がとてもリアルに描かれていることです。

最初から「おかしなこと」を信じているわけではない。ほんの小さな違和感や孤独、誰かに認められたいという気持ち。そこに「こういうことだったのかもしれない」という物語が与えられることで、少しずつ世界の見え方が変わっていく。
そして、その「物語」を意図的に作り、人の心を動かそうとする側の論理も描かれます。
人は事実だけで生きているわけではなく、自分が納得できる「物語」を必要としている。だからこそ、その欲求を満たす物語には、人を救うほどの力がある一方で、人を縛り、狂わせてしまうほどの力もある。

推し活も、SNSも、コミュニティも、あるいは自分が信じている何かも、少し違った形で考えれば、決して他人事ではない。何かをきっかけにこうなってしまうかもしれない、そんな怖さを感じました。

特に私も話題のINFP判定でしたし、生活を変えようと行動したことも何度も心当たりがありますからね。幸い、今のところ良い結果につながっているように思いますが。