JAL 空の安全をつくる機体整備工場を見学

 

昨日はリンクシェアセミナー「JAL(日本航空)機体整備工場見学会」に参加してきました。機体整備工場の見学はこちらから申し込みできるコースがあるのですが、今回は非公開の客室訓練部なども特別に見学させて頂きました。
JALと言えば会社更生法の適用で再建を目指しており、「JALに乗って大丈夫?」などとささやかれたりしていますが、実際航空機に載っていても運行の安全のためにどのようなことが行われているのかほとんど知りません。そのあたりを知る良い機会になるかと思い参加しました。(30名の参加でしたが応募は100名以上あったとか)
非常に興味深い体験でしたので2回に分けて記事を書きたいと想います。今回は整備工場について書きたいと思います。





当日は、整備士、運航乗務員、客室乗務員(CA)の皆様から直接様々なお話を伺うことができました。5時間にもわたり色々教えて頂きありがとうございました。

まずは航空機の整備のお話。整備には飛行毎のT整備の他、定期整備としてA整備、C整備、M整備があるそうです。
A整備は約1〜2ヶ月毎に8時間かけてエンジンや翼、車輪など外部から点検するそうです。エンジンオイルを分析したり、ファイバースコープで覗いたりしてエンジン内部の様子も調べるみたいですね。
C整備は約1〜2年毎に行う車検のようなもので、1週間かけて機能、動作を点検します。各部位の動作が規定範囲内か、航空会社毎に一部決められた部分は構造点検まで行うそうです。
M整備はオーバーホールのようなもので、約1ヶ月かけて内装を全部取って構造点検など徹底的に行います。
整備は航空機メーカーと航空会社が連携しており、不具合があったりすると点検期間を短くしたりして、同型の航空機の事故を防いでいるみたいです。
写真で持っているのはエンジンのファンブレード。バードストライクでエンジンに鳥が吸い込まれたりしたとき通常はそのまま出て行くが、軸近くだとエンジンに入り込んだりエンジンが停止したりするそうで、そういう場合はエンジン内部をファイバースコープなどで見たりするそうです。

運航整備は航空機が到着する前から始まっており、端末で今までの不具合や直前の整備状況などを確認するそうです。着陸時は翼のフラップのやエンジン(逆噴射など)の動作状況などや誘導路上の障害物が無いことを確認。到着と同時に運航乗務員とインターフォンを接続し不具合等なかったか確認し、整備の段取りを組み立てる。機体を外部から点検し、燃料を補給。客室乗務員や運航乗務員と状況確認し定められた整備項目とキャビンの不具合の修理などを行い、資格を持った責任者がサインを行い、乗務員に状況説明を行う。出発直前にさらに最終確認を行い、航空機をPUSH BACKして、手を振ってお見送り。
というのが運行整備の仕事だそうです。
しっかり手順が決まっていて、乗務員と整備士がうまく連携している感じに思いました。夜間整備などで時間内に実施しないとその機が使えず代替機を使うことで多大な迷惑をかけてしまうというプレッシャーの中、整備をやり遂げ、手を振ってお見送りする瞬間が一番嬉しい瞬間だとか。

さてハンガー(格納庫)へ移動して、機体整備の見学です。こちらは重整備用のM1ハンガー。とっても広い場所で東京ドームくらいあるとか。高さは6階建てビルくらいあります。朝から小雪が舞う天気だったので、ハンガー内はかなり冷えていました(こんな広さでは暖房もできないですよね)。
分かりにくいですが航空機の機体のまわりに足場が組まれ埋れている感じになっています。

エンジンはカバーが空けられていました。


もう一機同時に整備されています。

窓部分の内装ですね。ハニカム材が使われています。
飛行機が上空1万mで飛ぶときの外は0.2気圧。機内は0.8気圧ほどに与圧され外壁にはかなりの圧力がかかります。
飛行する度にこの与圧の繰り返しで疲労が起こったりするので、整備は非常に重要ですね。

作業状況などがランプ表示されています。

こちらはM-2ハンガー。日常点検用のハンガーで緊急点検にも使われるそうです。こちらにも航空機2機が入っていました。

場所があまりにも広いので航空機すら小さく見えます。

タラップで降りたとき以外、航空機をこんなに近くで見たことがないです。

先端部分にはレーダーが搭載されており樹脂製、雷などを防ぐため金属部分が筋で見える、雷を受けたときは雷の出口を確認する、速度は全面のピトー管で測定するなどなど、とても色々なことを説明していただけました(いつまでも語り続けられるような調子でした)。


飛行機の前に向かって左側をポートサイドと呼び、通常の乗り降りはポートサイドでしか行わないそうです。
ちなみに緊急脱出時に半分のドアから全員を90秒で避難できるようにしているとのこと。半分なのは風上に逃げれるように。
CAは全ドアの数は居るそうです。

もう一機はあまり見たことがない形で非常に細長いものでした。機種名とか忘れてしまった・・。

エンジンが後部についているので機体を低くできる、胴体下部の収容を増やすために少しだるま型をしているとか。


これはブレーキです。ブレーキは離陸時に緊急停止する場合、滑走路内で停止しないといけないため、時速350kmで走る離陸時重量400tの機体を止めるために大変強力なブレーキが必要。

ブレーキもタイヤもこのような立体駐車場のような倉庫を使っていました。

タイヤも離着陸の度にすり減るので、2〜3万回で交換するそうです。タイヤは再生して6回ほど使うそうです。タイヤ一本で200万円くらいするとか。タイヤの中には摩擦熱で燃えないように窒素ガスが入っているそうです。




ハンガーからは近くに滑走路が見えます。

非常に近くで着陸の様子を見ることができます。降下角度は3度くらいで、着陸直前に1.5度くらいにするのだとか。

プッシュバックする様子も。
構造上は航空機が自分でバックすることも可能ですが、バックは禁止されているそうです。

CAの方も同行されていましたが、整備工場に入ることは少なく貴重な体験だとか。
ヘルメットをかぶるCAさんというのも珍しい感じです。
機体整備作業の仕事を教えていただくことで整備士や運航乗務員、客室乗務員が一丸となって安全を作っているという自信と誇りを感じることができました。まさに安全は会議室で作っているんじゃない、現場で作っているんだって感じでしょうか。
コスト削減圧力もあるかと思いますが、ぜひその誇りを忘れずガンバッテ欲しいなと思いました。安全面ではどの航空会社も変わらず整備していると思いますが、航空会社によっては安全に関わらない不良箇所は放置したりなんてこともあるそうです。その点JALの基準はかなり高いみたい。
整備工場の見学はここで申込めば可能ですので、子供連れなどで訪れてみると良いのではないでしょうか?(内容は少し違うようですが)
無料ですが4ヶ月先まで埋まっている人気ぶりだそうです。
次回はいよいよ非公開の客室訓練部について書きたいと思います。

saya: