今日は、お世話になっているAMNの「Linkトラベラーズ旅ブログセミナー第1回 旅行写真・動画と権利」に参加してきました。講師は弁護士の河瀬 季(かわせ とき)先生。
旅写真・動画でどうしても写り込んでしまう人やモノなどをブログ等で公開すると法律的にどのような問題が発生するリスクがあるのか。あくまでも法律面からの解釈(人間関係やマナーなどは別にして)ですが、非常に分かりやすい話でいままでもやっとしていたものを明解にしていただけました。
よく肖像権という言葉が使われるが、法律的には肖像権という明確なものがあるわけではない。
問題となるのはプライバシー権の侵害。特定の個人がいつどこで何をしていたか知られたくない情報を公開するのはダメ。
個人が特定できないようなものや、別に知られて困らないようなものはプライバシー権の侵害にあたらない。
風景写真に小さく人が写っているのは法律上はほぼ問題にならない。
芸能人などでよく言われるパブリシティ権は、財産権と関連しており、その人の顔や名前などが財産的価値を持つ場合。普通の人には存在しない。
顧客吸引力にその財産を利用するような場合に問題となる。
法律上それほど強い権利ではなく、顧客吸引力などに利用していないと判断されれば問題とならない。
さらに、人間以外(動物も含む)にパブリシティ権があるかというと疑わしい。
著作権の観点では、他人の著作物を原則公開してはダメ。
例外として、実用品・大量生産品や屋外にあるもの、死後50年たったものは大丈夫。
著作物は大量生産品かそれ以外で扱いが異なる。純粋美術とみなされない限り民芸品や建築物などは大量生産品とみなされる。
料理は国によっては著作物と認めているが、日本では著作物ではない。
所有権はモノを持っていかれない権利なので、写真を撮ってはダメということはできない。
なので、人のものを勝手に写真に撮るなという権利があるわけではない。
商標権は「商標として」勝手に他人が使うことを禁止している。写真に移り込む程度は商標として使っている事にならないので大丈夫。
では、「撮影禁止」とする法的解釈はどうなるのか?
法的には住居権。撮影禁止なのに撮影目的で私有地に入るのは建造物等侵入罪にあたる。
入る前に撮影禁止を掲示して知らせる必要がある。
居住権ではその敷地外から撮影するのは問題とならない。
入った後では撮影禁止を理由に退去を要求され、退去しない場合の不退去罪がある。
他に撮影禁止を正当化する法律はなく、撮影した写真の扱いも不問。
ただし、次から入るなと言われて入るのも侵入罪。
コンサートの場合、プライバシー的には公開されている情報なので、肖像権侵害はありえない。
芸能人の財産を利用しているのにも相当しないのでパブリシティ権侵害にもあたらない。
撮影禁止とする根拠は建造物侵入としか解釈できない。
世の中には著作権を理由に非公開等を要求する擬似著作権がはびこっているが法的な根拠はない。
権利侵害の場合、公開停止や損害賠償を求めることができるが、損害賠償は意図的な侵害または予見すべき場合なのでたまたま写り込んだ場合はあたらない。ただし、プライバシー侵害などで公開停止を求められてもそのままにしてしまうと、損害賠償に問われた事例もある。
以上が法的な解釈ですが、人間関係の問題や契約の問題などは別問題なので、法的に問題がないからと言って公開して問題にならないわけではない。
法的リスクとその他のリスクを踏まえて判断して欲しい。
セミナーではより具体的な事例や判例、質疑応答もあり、とても分かりやすかったです。河瀬先生ありがとうございました。
また、Linkトラベラーズではこういう勉強会を引き続き開催していく予定だとか。期待しています。
著作権については、こちらの記事でも詳しく紹介していますので、良かったらご覧ください。