
先月は塚田工房さんで江戸木目込人形の製作体験を楽しみましたが、今回はアトリエ創藝館で江戸文字の体験に挑戦しました。このイベントはすみだファンCLUB向けに企画され、特別料金やポイント利用が可能でした。

アトリエ創藝館さんは、墨田区横川3丁目、錦糸町駅と東京スカイツリーの中間に位置しています。

工房には提灯や木札が飾られ、独特の江戸文字が目を引きます。

工房のすぐ近くには体験工房があり、江戸文字の魅力に触れることができます。

かつては提灯や江戸文字の工房が多くありましたが、コロナ禍で需要が減り、今も続けているところはわずかだそう。それでも、江戸文字体験は墨田区の伝統工芸として注目され、東京スカイツリーを訪れるインバウンド客や修学旅行生に人気を集めています。

特に印象的だったのは、東日本大震災の翌年、東北の修学旅行生がこの体験に参加したエピソードです。最初は元気のなかった子どもたちが、文字を描く過程で少しずつ笑顔を取り戻したそうです。文字を書く行為には、心を癒し、力を与える不思議な力があるのだと感じました。

「字のバランスは思いやりに通じる」と職人さんが教えてくれました。へんは自分、つくりは相手と考え、気持ちを込めて書くことで美しいバランスが生まれるのだとか。現代の子どもたちはスマホで文字を入力することが多く、手で書く機会が減っているのを危惧されていました。

江戸文字には厳密な定義はなく、江戸時代にデザインされた文字全般を指します。その種類も多彩で、たとえば相撲文字は力強く太い線で、組み合う力士のように密着したデザインが特徴。番付表は隙間なく埋めることで「空席がないように」との願いが込められています。籠文字は輪郭を先に描き、塗り込むスタイルで、髭文字は神仏につながる縁起の良さを象徴。歌舞伎文字は、はらいやはねを省くことで興行の成功を願うものだそうです。こうした思いを込めて書くことが、江戸文字の魅力のひとつです。

体験では、扇子か提灯を選べましたが、私は提灯を選びました。

まずは鉛筆で下書き。良い文字が思いつかず、家族を思い浮かべながら名字を書くことにしました。大きく太く書くのがコツですが、つい小さくなってしまい、職人さんに手直ししてもらいました。

次に、提灯に木炭で下書きをし、墨で丁寧に描いていきます。

提灯の凸凹した表面に書くのはなかなか難しく、苦戦しました。

輪郭を描いた後、中を塗りつぶします。

なんとか完成。

裏側にはシールや絵の具で絵を加えることができます。

持ち手をつけて飾れるようにしました。色が変化するLEDライトを入れると、提灯が美しく光ります。

普段、文字を手で書く機会が減っているからこそ、思いを込めてデザインし、書く体験はとても貴重でした。江戸文字を通じて、文字の力や伝統の深さを感じることができた、特別な一日でした。



