ぺんてる株式会社より、自動芯出し機構搭載の量産型シャープペン「オレンズAT デュアルグリップタイプ」となめらかさにこだわった新シャー芯「Pentel Ain(ぺんてるアイン)」の発売が発表されました。その新商品体験発表会に参加することができ(オンラインですが)、開発者自ら開発にかけた想いなどを伺うことができ、またレビュー用に製品も提供していただきましたので、そのこだわりと使用感を紹介したいと思います。
オレンズ AT デュアルグリップタイプ
orenzはシャー芯の折れないシャープペン。そのorenzに自動芯出し機構を搭載し究極進化させた「orenznero」のこだわりは下記の記事で紹介させていただきましたが、人気すぎて入手できない状態も続いていました。
その一因は自動芯出し機構の肝となる金属製のボールチャックの生産性の問題があったそうです。どうにか自動芯出し機構をより身近にできないかと、樹脂製にする研究が続けられたそうです。
樹脂製にするといっても、素材の精度や強度などの課題が多く、様々な強度のシャー芯をしっかりと掴めて送り出せる機構の開発には多くの年月がかかり、苦労の末、ほとんど新しい設計で実現できたのだとか。
そうしてorenznero(ガンダム)の量産化に成功したジムタイプが「orenz AT」になります。ATはAutomatic Technologyの略で、そのまま自動芯出し機構を表しています。
芯径はまずはメジャーな0.5mmに対応。重量はorenzneroより軽量になって日常使いしやすくなっています。
この先端が引っ込んだ状態から、1回ノックするとパイプが繰り出され少しだけシャー芯が見えます。
この状態であとはノックすることなく書き続けられます。試験など1分1秒を争うシーンで、シャー芯の状態を気にせず、考えることに集中できることを想定して開発されました。
orenz ATでメモをたくさん書いてみましたが、とても使いやすく書き心地が良いですね。筆圧が強くても弱くても問題ないです。あえて言えばずっと同じ向きで斜めに持っているとパイプが紙に引っかかることがありましたが、適度に回転しながら使うとそんな問題も解消。まさに書き続けられました。
機械だけでなく、実使用を想定して人が膨大な手書き検証もしているのだとか。
デュアルグリップは金属とゴムを組み合わせたグリップ。金属は低重心にでき、ゴムは滑り止めになるという、いいとこ取りのグリップです。ゴムだけだと劣化することもあるので、デュアルグリップは良いですね。
過去の様々なシャープペンのDNAを継承して完成した、orenz AT。自動芯出し機構をこれからのスタンダードにしたいと語られていました。
ボディカラーは、ダークレッド、ダークブルー、グレー、シルバーの4色。色は思考の邪魔をしない落ち着いた色を選んだそうです。
オレンズATデュアルグリップタイプは2023年1月24日発売です。価格は2,200円(税込)。
Pentel Ain
Pentel Ainは、なめらかさにこだわった13年ぶりのシャープペン替芯の新ブランド。Ainはドイツ語の1を表すeinsからナンバーワンブランドになりたいという思いと、All Inのすべてのポイントでバランスが取れた高性能を示すという思いが込められています。
なめらかさ・折れにくさ、濃さ・減りにくさ、消しやすさ・汚れにくさなど、シャー芯の使い勝手の良さのポイントはトレードオフになっているので、なかなかすべてを良くするのは難しいのですが、すべて高いレベルでバランスのとれたものにするということを目指したそう。
今回特にこだわったのがなめらかさ。でも、それが実現できたのは「特殊オイル」の発見と「原材料にオイルを混ぜる」という発想の転換。固定概念にとらわれない若手の発想を否定せず、研究した結果、実現できたのだとか。
そもそも、黒鉛に粘土を混ぜていた芯に変わりハイポリマー芯を開発するきっかけとなったのも、ストーブで焦げたおにぎりに着想を得て、様々な有機物の炭化を粘土の代わりに試してみたからで、そういったチャレンジ精神がぺんてるの伝統だそう。
シャー芯だけでなく、そのケースにもこだわっています。誰にでも使いやすいケースを目指して、300人以上の行動観察をしてみたそうですが、利き手・年齢など関係なく取り出し方はバラバラで傾向がなかったそう。
そこで、必要な本数が、傾けなくても取り出せて、勝手に開かない仕組みを考えたがこのケース。
まずはケースを下にずらします。
するとOPENの文字が見えるので、右にずらすと、
芯が並んで出てくるので、好きな本数を取り出すだけ。
実は裏側はより芯が出ているので、人差し指と親指で取り出しやすくなっています。
取り出したあとは元に戻してロックすると勝手にこぼれることもありません。
昔は下に向けて芯がいっぱい出てしまったり、一度に取り出しにくかったりとか経験しましたが、この機構はシンプルなのにとてもよくできていますね。
さらに購入時には芯の太さや硬さが分かりやすく表示され、使うときはシールを剥がしてノイズレスなデザインにするという工夫もされています。
ケースの黒色は、完全な黒ではなくシャー芯の色になっているのだとか。
ぺんてるは、こういった普段はシャープペンの影に隠れているシャー芯の魅力やこだわりを改めて知ってもらうために、シャー芯の形状が「1」に似ていることから、1月11日を「シャー芯の日」として登録したそうです。
Pentel Ainは2023年1月30日発売です。価格は220円(税込)。
テストや勉強、デザインなどに、思考を止めずに書き続けられる「orenz AT」と「Pentel Ain」のセット。とてもおすすめですよ。
お話を伺った開発者の皆様、ありがとうございました。
(写真左から)
・Pentel Ain
製品戦略本部 製品戦略部 デザイングループ 梅谷 朋世
研究開発本部 第二開発グループ 係長 坂田 祖
製品戦略本部 製品戦略部 マーケティンググループ 係長 水口 和也
・オレンズ AT デュアルグリップタイプ
製品戦略本部 製品戦略部 商品企画グループ 主任 大澤 成
製品戦略本部 製品戦略部 デザイングループ 課長 柴田 智明
ピンバック: 2023年の振り返り | Digital Life Innovator