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4/20発売のアスキー新書のまつもとあつし著「ソーシャルゲームのすごい仕組み」、西田宗千佳著「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」を読みました。
ソーシャルゲームの方はやったことがないですが急成長やコンプガチャの話題などで興味を持っていたのでとても参考になりましたし、スマートテレビの方はやっぱりそうだよねというような内容で考えが整理できました。
そんな中、デジタルハリウッド大学院で両著者による「スマートテレビ」×「ソーシャルゲーム」 出版記念セミナー(無料)が開催されるというので参加してきました。
同じ発売日ということでハード、ソフト両面の話をしてみよう、出版から大きな動きもあったのでという感じでしたが、とても興味深い内容でしたので、セミナーの内容をメモしておきます(発言通りじゃなくて意訳です)。
本の内容に関するネタバレがありますのでご注意下さい。


ソーシャルゲーム(まつもとあつし氏)

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ソーシャルゲームは収益率40%とか言われて注目されていたが、そのやり方に疑問を持っていた。
本書の出版後懸念していたことが現実になり、コンプガチャ問題によって一転してゲーム脳ふたたび的なソーシャルゲーム糾弾状態になっている。
黒に近いと開発側も認識していたが、売上げが低いと自社ソーシャルゲームへの導線(リンク)が無くなるため、コンプガチャをやらざるを得ない状況だった。
まさに囚人のジレンマで、それぞれの企業だけでは解決できないため、業界団体などで解決を図る必要がある。
この問題がソーシャルゲームの可能性を壊すことを懸念している。
コストのかかるパッケージゲームから物語をそぎ落としたソーシャルゲームにおいて、ゲームの本質を見極めて日本が再びゲーム大国になるか、ギャンブルに走って市場を狭めてしまうかの岐路に立っていると考えている。


スマートテレビ(西田宗千佳氏)

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4K2Kといった高画質はある層には価値がありそれ自体を否定すべきでないが、付加価値にすぎず市場全体を牽引することはできない。
ソーシャル革命で視聴ニーズが変化する中、スマートフォン/タブレット的な機能を付加したTVをスマートテレビだという主張もあるが、これには操作性という課題がある。インターネットTVとかコネクテッドTVとか以前よりネット連携機能を搭載してきたが、操作性がネックになりほとんど使われていない。
iPhoneが起こした変化と同様、ボタン操作から脱却した簡単で楽な操作性を実現して初めてスマートTVが実現する。
地デジへの切り替えでリビングのテレビは買い替えられたが、個室のテレビは買い換えられていないという調査結果がある。タブレットが自分専用のテレビ+PCの代わりになるという点で主婦層には受けている。
テレビはライフサイクルが長いので、テレビにスマート要素を入れ込むという考え方はそぐわない。
日本独特のニーズとして録画がある(米国では多チャンネルのため何度も再放送され、パッケージメディアも安いので録画しない)。全録は予約操作が必要なくなるので操作が簡単になる。HDDを探せば見たい番組が見つかる全録でリアルタイム視聴が減り、VODを組み合わせればほとんど編成の必要性がなくなる
SNSで番組を知り視聴につながるということが多くなっており、SNS連携は番組提供側にとっても価値が高い。


パネルディスカッション
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鴻海によるシャープ堺工場の買収をどう見るか?
液晶パネル工場は原価率が高いため、稼働率が高くないと赤字となる。シャープは需要不足から巨大な赤字を計上していたが、鴻海は世界の販売店ブランドまで含めるとシェアが高く、多くの販売先を握っている。アップルとの契約などもあり技術力アピールという意味はあるが、堺工場が得意とする55インチ以上の大型パネルをアップルTVで利用するという話ではないと思う。
3D→4Kというハード技術の進化は市場を開拓できるか?
3Dはメーカーがお金をかけずに付加価値を上げるという意味でドルビーサラウンド搭載と同じような上位機種にはあって当たり前にしようという目論みであったが、日本では3Dアレルギーが強く普及しなかった。米国などではスポーツや映画など特別なときに使うものという風に受け取られている。
4Kはコストがかかってしまうため、一部の層のニーズはあると思うが全体を引っ張るのは難しい。やはり5〜10万円の機器が市場を牽引すると思われる。
ゲーム機がSTBになるという可能性は?
世界的にはXbox360がアバターを使って、スタジアムで一緒にゲームを見る感覚を実現している。コンテンツとの統合ではPS3が先行している。
アップルTVがSTBとして150〜500ドル程度で販売される可能性は高いと思うが、すでに普及しているゲーム機にもハード費用がかからないというメリットがある。
米国ではNetflixが6〜7割も普及しているが、その6割程度はWiiを端末として使っている。理由は安いから。
日本でのWiiの課題はケーブルを外してしまう家庭が多いこと。Wiiの間の終了もこれと関連しているかも。健康ブームに乗って売れた面もあり飽きたので外されることも多い。6月のE3でのWii Uがこのあたりどのように対策してくるかが注目。
PS3はよりWiiより繋がれた状態だが、リビングというより自分の部屋にあることが多い。
定額動画視聴がキャリア各社より発表されたが、日本で定着するか?
携帯キャリアの定額視聴サービスはスマートフォンをテレビに繋いでなどという使い方をうたっているが、かなり疑問である。そのまま寝転んでみた方が楽。ディスクを買ってor借りて入れるだけという分かりやすさに勝てない。
定額動画視聴は日本は後手後手にまわっており2年半ほど遅れている。その原因は、米国ほど格差が大きくなくNetflixでないと動画をみれないような家庭がない、宅配網が充実しているため宅配レンタルサービスがそれほど不自由でないなどの理由が考えられる。
TSUTAYAがNetflix同様にコストを考えて同様のオンラインサービスを始めれば転換点となると思うが、フランチャイズへの配慮や日本特有のレンタルビデオの仕入れ方などが障害となる。あるいはNetflixの黒船来航か。テレビ各局が定額サービスを始めるというパターンもある。
ハーバード白熱教室のようにSNSからNHKオンデマンドに火がつき、TV視聴につながるというパターンもある。ただしこれはNHKだからできたことで、民放にはCMをどうするという問題がつきまとう。
スマートテレビとゲームの関係は?
現状のソーシャルゲームは手元の端末の方がふさわしいかもしれないが、ノンパッケージ型のコンパクトなゲームはスマートテレビのコンテンツになる。
コンプガチャがなくなるとソーシャルゲームへの影響は?
2割ほど売上げが減るがアイテム課金やガチャという収入もある。
業界にコンプガチャ依存があったので脱却する必要はある。
コンプガチャは射幸心というよりは、確率の理解不足による錯誤が問題。
非ソーシャルとソーシャルの関係はどうなるか?
ノンパッケージ型はすべてソーシャルになっていく。非ソーシャルは大きなプロジェクトになってしまう。ソーシャルはローカライズしないといけない。
売上げ以外の評価は?
ガラケーでは単純な表現しかできないため、ストーリーをそぎ落とし、世界観よりも刺激を重視した結果、刺激が売上げと直結する結果になった。
スマホでは表現力がアップしたためより工数がかかることが問題となっているが、刺激だけでない面白さなどの要素も重視されてくると思われる。
ソーシャルゲームの方向性
ソーシャルゲームは米国ではPC中心でFacebook上で行われているものが多く、濃密なコミュニケーションと結びついているモノが多い。日本ではガラケーなどでゲームするためだけに集まった人たちの間で行われているため、コミュニケーションは深くない。
本格的なゲームからカジュアル、簡単、リアルタイムという方向性や健全化が重要となる。
パッケージゲームは巨大なプロジェクトによる一か八かのモデル。小さなプロジェクトでスピード感を持ってリリースされるノンパッケージゲームが重要になる
日本ではパッケージゲームのうまみが強く、Appleに変革されるまで変われなかった。
ノンパッケージは販売や流通をどうするなどの課題がある。
スマートテレビの注目点
ニコニコ動画をテレビやゲーム機に展開していく新会社キテラスは見せ方や選び方を真剣に検討している。NHK技研のハイブリッド・キャストも放送通信連携を見せている。
みんなで見るというイメージを作れるか?コミュニケーションをどうするか?入力方法は?などが課題になる。
教育への応用
米国では教科書は中古のものを使うことで下線などで重要ポイントなどが引き継がれるという文化がある。ソーシャルリーディングというのは教育で役に立つ。
一人一台タブレットというのも良い。教科書やノートでできないことコンピュータがあるとできることが。
クイズ番組のように各自のタブレットとテレビが連携して、皆の回答を見て勉強するというのも良い。すでにそのようなことをしている先生もおり、技術的には難しくない。
教育にゲーミフィケーション要素を加えるのも効果がある。
ミッションを与え、各自がプレーヤーとなって達成を競うなど。
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