今日はシャープの進化するGALAPAGOSモノフェローズイベントに参加してきました。
GALAPAGOSの開発に携わった笹岡孝佳さん、村松正浩さん、松本融さんからかなり前からの電子書籍への取り組みとGALAPAGOSを立ち上げた思いを伺いました。また、Twonkyセミナーのときにお会いした本田雅一さんから電子書籍関連市場の話を伺いました。
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まずGALAPAGOSとは何か?
シャープとしては端末、サービスPF、コンテンツを垂直統合した、電子書籍に関する新たな体験・世界観すべてをGALAPAGOSと呼んでいるようです。なので、端末のメディアタブレットやソフトバンクのスマートフォン、TSUTAYA GALAPAGOS STORE、XMDFフォーマットの電子書籍群すべてがGALAPAGOSという世界を構成する要素になります。
そしてこの世界で実現しようとしているのが、新しい生活習慣を提案すること。ネットになれたリテラシーの高い人がプル型(検索)で情報をとってくるだけでなく、プッシュ型(新聞やテレビのように自然に届く)の電子書籍体験を提案しようとしています。
そのため新聞や定期購読の雑誌などを自動定期配信するのが一つの特徴となっています。
端末上のアプリケーションは出会い(未読/おすすめ)、併読(最近読んだ本)、重読(お気に入り)、習慣(定期購読)を意識した本棚となっています。
ストアも新しい書籍との出会いを大切にして、スクエア(書店の島)、ストリート(テーマ関連書籍)、特集(書店の平台、書籍を紹介)などを意識したインタフェースにしたそうです。
では、なぜシャープがこのような世界を実現しようと思ったのか?
昔はZAURUSなどで、ユーザが求めているものをユーザと一緒にハードウェア、ソフトウェア、サービスなどセットで考え提供してきたが、現在はサービスは米国発のものに押され、ハードウェアしか作れていない。そのハードウェアも中国等に押されてきている。
そして今、電子書籍の動きがあるが、世界的に有名なEPUBには日本特有の用件は入りにくい。ZAURUSのブンコビューアの時代からXMDFを推進してきたシャープは「日本特有の書籍文化を守りたい」との強い思いで、GALAPAGOSという世界を実現しようとしているみたいです。GALAPAGOS開発陣はZAURUS開発に携わった人も多いとか。
日本特有の書籍文化とは、縦書き表現やルビ、段落、回り込みなどはもちろん、コミックの表現やマルチメディア機能なんかも含むようです。これを実現することができるフォーマットがXDMFでIECの国際標準になっているそうです。
GALAPAGOSはオープンな世界なので、ハードウェアは誰が作ってもよいが、自らその新しい体験にふさわしい象徴的な端末を実現しようと作ったのがメディアタブレットらしいです。上の写真はその試作品たちです。
高精細画面でフォントなどがきれいに見えるとともに、モバイル用途の5.5型ではもちやすく、トラックボールで電車の中で片手持ちでも操作しやすいように、ホーム用途の10.8型では大きく一覧できるように考えられているようです。
本田雅一さんから電子書籍というと、紙か電子かというような話になりがちだが、そんな二元論ではなく、新たなエコシステムを作り上げないといけないという状況にあるのだという。
書籍市場が縮小しつづけており、対してネット販売は年15%で増加。リアル書店の市場規模は3割減し、坪当たり50万円の書籍在庫が出版社に還流、除却すると大幅赤字に・・といったワーストケースも考えられ、出版社にとっても生き残りをかけ、電子書籍の市場を作り出さないといけない。書籍、雑誌、新聞それぞれの特徴にあわせた機能性が必要になる。
また現在の書店での販売では、有名な作家の本が大量に積まれているので、新人が出てきにくい環境にある。個人と書籍の出会いの演出やSNSとの関連付けでそういう問題に対応できたりするのではないか。低配布コストを活かして児童図書の電子貸出なんかもあるのでは・・・などなど、興味深い話をしていただきました(少し意訳しています)。
あとは主な質疑応答を書いておきます。
・買った本は保護されるのか?
ストア側でデータを持つので台数制限3台はあるが、対応する機器で使い分けて共有できる。ただし、読んだところのマーキングの共有などは現状できない。
・対応する機器は?
もうすぐ、ドコモのLYNX 3DとソフトバンクのGALAPAGOSが対応する。その他のAndroidスマートフォンにも将来的には対応する予定。Androidはまだ発展途上なので、落ちるアプリなどで世界を崩したくないのでしっかり検証する必要がある。
・端末の機能追加は?
シャープは今まで機能追加アップデートはしたことがないが、GALAPAGOSは進化すると言っているようにOSのアップデートを含め機能の向上をしていく予定。
具体的には春以降に動画サービスを行う。
・SNS連携は?
ぜひ実施したいと思っている。既存のSNSと連携することを考えている。
ブックマークリストが一覧できるようになっているのでそれを共有したりすると面白いのではないか。
・なぜGALAPAGOSと命名したのか?
GALAPAGOSは本来の進化の象徴としての命名。前向きなイメージで言っているが賛否両論の反応があるのは確か。でもそれだけ話題と知名度を得たのは良かった。
・スキャンしたPDFなどは入れられるのか?
専用ソフトを使って端末に転送することができるが、クラウド側に持っていくことはできない。プリンタと見なしてプリンタドライバでXMDFに変換して転送することもできる。
最初GALAPAGOSの発表関連記事を見たとき、名称やXMDFの話とかばかりで、何がしたいのか正直よくわからなかったのですが、今回のイベントで日本の書籍文化を守り、新しい書籍体験を作りたいという思いがよくわかりました。
iPodのように、手持ちのCDを変換して本体に入れてしまい、CDを持ち運んだり、保存したりしなくてよくなるというメリットを、電子書籍と本の関係でも実現できれば良いのですが、自炊といわれているようにスキャンして入れるというのはかなり面倒です。かといって、何もない本棚が並ぶハードウェアというのも寂しいものがあります。
垂直統合のエコシステムで重要なのはゲーム機と同じように端末の普及ですね。iPodのようにそれなりの台数が出れば、影響力も大きくなり関係者を巻き込みやすくなるかと思いますが、今のメディアタブレットや対応ハードウェアの展開では大丈夫かな?ここで一杯本を買っても良いものか?と思ってしまいます。音楽と同じでDRMありのフォーマットは管理する人が止めれば、読むことができなくなる可能性がありますし・・。
まずはぜひ、本の買い取りを始めたTSUTAYAと、買い取りを現金でなく、電子書籍クーポンでかなりお得に還元して、既存の本棚を整理して、電子書籍を買わせるような仕組みを構築してほしい。
SNS連携はもちろん、リアルな本でもちゃんとつながる(ページ数など)口コミの仕組みも構築してほしいですね。本は口コミで買うことが本当に多いので。
その場で体験する時間はほとんどありませんでしたが、1ヶ月間メディアタブレットをお借りすることができました。また、コンテンツ代金も一定額まで出して頂けるそうなので、端末やサービスについては試して別途記載したいと思います。
シャープ、WillViiの皆様、本田さん、モノフェローズの皆様ありがとうございました。