昨日は、アンバサダーサミット2015に参加してきました。
いつもお世話になっているアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)さんが取り組んでいるアンバサダープログラムの事例を共有・議論する企業向け招待制(一部一般応募)のイベントです。私はブロガー、アンバサダーとしてイベントに参加する立場ですが、ブロガー枠で招待していただきましたので、アンバサダープログラムの裏側を知る機会として興味深く聞いてきました。
アンバサダーとは大使のことで、良くブランドを広める大使として、有名人がアンバサダーとして任命されていたりしますが、AMNでは一般の人でもブランドについて熱く語る熱量の高いファンをアンバサダーとし、「ファンが活性化する機会を提供することで、ブランドについて語る言葉を増やし、価値・魅力を友人や家族に伝えてもらう活動」をアンバサダー・プログラムとしているそうです。
影響力のあるインフルエンサー中心の取り組みから、ファン度の高いアンバサダー中心の施策へとシフトした(実際はその組み合わせですが)AMNですが、かなりアンバサダープログラムの事例を積み重ねることで、ビジネスとしての効果・課題などが明確化してきた印象を受けました。
アンバサダーとなる人をSNSや自社媒体などで募集、登録してもらい、その中でファン度の高い人を分析抽出して、様々な体験の機会を提供し、発言を活性化したり商品を推奨してもらったりするということを継続的に行うのがアンバサダー・プログラムのフレーム。
一過性のイベントで終わるのではなく、アンバサダーを発見し、活性化し、積み重ねて資産化することを価値として提供しているみたいです。
他の賞品などでなく体験することがインセンティブに感じるようなファンを、簡単なキャンペーン応募でなく活動趣旨に賛同して登録を求めることで、自分がアンバサダーと認識し行動を変えるきっかけになるのだとか。
登録前後でTwitterやブログでの発言数や発言者数の変化をみると、ブランド言及数で5倍、発言者数で2.9倍。
イベント等の体験参加者の発言が多くなるのは当たり前なので、登録したけど施策に不参加な人に限定して比較してみても言及数で4.3倍、発言者数で2.4倍になったそう。自分がアンバサダーとして認識した結果と分析されていました。
アンバサダー・プログラムの課題としては、情報拡散、大規模発掘、ビジネス貢献などがある。
影響力の少なさは、自社のタッチポイント(公式ページやSNSなど)やネイティブアドを活用することが考えられる。
アンバサダーを多く得るには、マス広告などと連動させて、その結果アンバサダーが蓄積するようにする。
ビジネス貢献は誘導や購買について可視化することが必要になる。
そして様々なアンバサダープログラムを3つのパターンに類型化。
ブランド自体のファンになってもらい、他者へ推奨したり、ファンならではのコンテンツを創出・拡散する「ブランドファン型」。
そもそも商品カテゴリに対する認知が低い場合に、利用シーンや体験を発信し、盛り上げていく「カテゴリ啓蒙型」。
ファンと一緒になって商品やサービス開発を行ったり改善したり、コミュニティを作っていく「コラボ型」。
それぞれのパターンに当てはまる事例をその可能性と課題というテーマのパネルディスカッション形式で、共有して頂けました。
(以下、簡単なメモに基づく意訳なので、発言通りではないです)
ブランドファン型アンバサダープログラムの可能性と課題
ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
マーケティング部 プロモーション課 AD プランニングマネージャー 笹谷尚弘氏
企業が一方的に良い所を発信する広告の限界を感じ、良さも悪さも含め評判を広め、好きになってもらうのが目的。
Xperiaのタッチ&トライイベントやモニターのブログ記事をイリーガルで無い限り口出しをしない形で公式サイトからリンク。イベント時にそのことを約束した。
影響力を重視してiPhoneユーザなどを集めるより、実際にXperiaを利用しているファンを呼ぶことで、記事執筆数や内容の本気さが大幅に向上。モニター後に購入する人も。(図は他社の事例を含めた一般的なブロガー施策との比較)
ロイヤルカスタマーとなり継続使用してくれる人を重視。影響力は自社メディアなどで保管できる。
指標が無く効果が見えづらいのが課題。
社員がアンバサダーとなるような取り組みもしたい。
株式会社パルコ
WEBコミュニケーション部 林直孝氏
福岡パルコの新館オープン時にアンバサダーを募集。フォロワー数の多い公式Twitterなどで集めたところ300人ほど集まった。
新館には飲食や食品が多かったので、オープン前に試食会を実施。1/3が応募。
オペレーションに関する改善要望など率直な意見が多く集まり、各店舗にフィードバックできたのは良かった。
今まで直接にお客様の声を聞く手段がなかったが、生の声を聞いてテナントのサービスや運用の改善に使えるのは良い。
今後の展開として読者モデルを募集したところ、その応募条件にもかかわらず、想定以上の応募があった。
体験を促進し、感動を共有してもらいたい。マーケティングメッセージを押し付けてもダメ。
パルコはショッピングセンター型の運営で自前商品がないが、出店しているテナントが使えるブログ形式のサイトにショッピングカート機能を追加したのが「カエル パルコ」。直接買ったり、とりおきしたりできるようにした。
その結果、1PVあたり15円ほどのオンラインの売上があることがわかった。これを上げていきたい。
ショップ店員やお客様をアンバサダーにしていきたい。
コクヨS&T株式会社
事業戦略部 ネットソリューションVU シニアスペシャリスト 山崎篤氏
商品開発に顧客の声を入れたり、ファン作りをするのが目的。
今まで草の根的に施策を行ってきたりしたが、新商品CamiApp Sの発売時にチームで取り組んだ。
発表前にシークレットミーティングを開催。
発売前で生産に入っている段階だが、アプリなどに関する意見は取り入れリリース前に実装。
発表会では、社長やパートナー、シークレットミーティング参加ブロガーに参加してもらったり、コラボ商品も発表したりと今までにない取り組みを行った。
その結果、ECサイトからはソーシャルやアフィリエイトからの購入が他に比べて多いという話は聞いている。流通や小売から効果があるという話があると社内説明に効く。
今後は、他の商品群などにも広げていきたい。
やるながないので、やってみせる。
啓蒙型アンバサダープログラムの可能性と課題
ユニバーサル ミュージック合同会社
副社長直轄 イノベーション担当 ゼネラルマネージャー 鈴木貴歩氏
洋楽という大きなくくりでの発信、ファン化を行った。
アーティストの個々のファンクラブは会費の支払いで会報や優先購入権が得られるが、発信にはつながらない。
#テイラーアンバサダー というハッシュタグを1回仕掛け勝手に育ったり、アリアナ・グランデに関する同世代の人のコメントなど、伝えきれない感性的なところが拡散されたりが良かった。
頑張った人にグッズが届くというような仕組みは、言いたがりの人の承認欲求を満たし、さらに発信が多くなる。
邦楽のアーティストにも広げたり、地域毎のリアルなコミュニティにも発展させていきたい。
ヤマハ発動機株式会社
コーポレートコミュニケーション部 WEBグループ グループリーダー 橋本耕氏
ブロガーとのリレーションは個人的にやっていたが、2014年は本格的に取り組んだ。
ヤマハ発動機は非日常の商品が多く、体験してみないとその良さが伝わらなかったりするが、身近な人が体験を発信することで、安心感を得られるようにすることを狙った。
イベント参加者はバイクに主婦のようなメインの客層とは違う人をわざと選んでギャップを狙った。
スタッフもおもいっきり遊ぶ。
マリンファンのブロガーにメーカーとの間に立ってもらう。
体験をしてはじめてそんな世界があったことを知る。
みんなの笑顔が心のこもった一枚の写真、一行の文章を生み、距離感を縮めてくれる。
イベント後の継続的な情報発信を行ってもらうようにボート免許取得の支援をしたりして、実際多くの人がボート免許を取得した。
ブログ記事へのリンクは企業サイトのニュースリリースのページに置いた。
社内公募でブロガーリレーションに2名の専属社員を付けたので、Win-Winになるような取り組みを行っていきたい。
株式会社NTTドコモ
マーケティング部 マーケティング戦略 担当課長 川口達哉氏
シニアの方はガラケーを使い続け、スマホやタブレットに変える気がない。
シニアに伝える場もない。タブレット教室などの取り組みもあるが手間がかかり広げにくい。
子世代が親に持たせると良いことを伝えることを狙った。
作戦会議という形でイベントを実施。
質の良い記事やコメントを様々な角度から発信され手応えを感じた。
アンバサダーの記事を店頭での販促ツールとしても活用していきたい。
タブレットのモニターでdマーケットなどの付加価値サービスなども使ってもらい良い記事も書いてもらったので、サービス方面にも拡大していきたい。
株式会社PFU
イメージビジネスグループ 国内営業統括部長 松本秀樹氏
イメージスキャナという商品の認知が低いためScanSnapの新商品発表会ではアンバサダーやインフルエンサーの力を借りた。
各業界で活躍する人をアンバサダーと認定し、11月にさらに大学教授、パソコン教室代表、行政書士、税理士、会計士、医師など7名を追加。
各業界の勉強会などでユーザとして使い方を発信してもらうような活動をしている。
アンバサダーの通信簿を作ったりもしている。
話題になると売れるのは確かだが、アンバサダーは因子の一つ。
実態のある業務、用途のきっかけづくりとして粘り強く行っていきたい。
アンバサダーが目的にならないように。
コラボ型アンバサダープログラムの可能性と課題
森永乳業株式会社
第一営業本部 リテール事業部 マーケティング統括部 食品マーケティンググループ リーダー 鈴木いずみ氏
れん乳は1年間食べていないという人が6割。
より多くの人に食べてもらうために、れん乳ファンのブロガーイベントを開催。
使い切れずにもったいないという声からアンバサダーミーティングで、ディスペンパック入りの新商品を開発。第2,第3の商品も発売予定。
ミルリンれん乳ファームというサイトでは、一番需要の多いレシピの情報に加え、サイトの回遊が増えるような情報の充実を図った。
その結果滞在時間も長くなった。
ネスレ日本株式会社
コンシューマーコミュニティ開発グループ ネスカフェ アンバサダービジネスユニット 部長 津田 匡保氏
ネスカフェはシェアが高いにもかかわらず、好きなブランドとして認知されていない。ファンを拡大したい。
自分の職場に美味しいコーヒーと笑顔を届ける「ネスカフェ アンバサダー」という仕組みを展開。
アンバサダーと一緒にサービスを創っていく。
いかに声を引き上げるかが重要で、Face to Faceで本音を聞き出すようにしている。
出張デモサービスはその声から生まれたもので、応募数が20%アップするという効果が得られた。
このネスカフェアンバサダーのコミュニティを拡大していきたい。
絆作りのためにネスカフェアンバサダーサンクスパーティなどを実施。
体験がキーワード。今年はキャンプなどを行うことを考えている。
他の企業とコラボして一緒にファンを作りたい。
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
DIGITAL・CRM推進ユニット GM 干場香名女氏
TV CMはフランチャイズ店から売上につながるものを求められるので、なかなかケンタッキーのブランドやストーリーなどは伝えられない。
アンバサダーイベントを実店舗で開催したところ、クイズやグループワークなどで一体感が生まれ、参加者から良い声が得られるのはもちろん、社員がファンにふれることでモチベーションアップにつながる。
社内を巻き込んでいくようにしている。
ネスカフェのようにビジネスモデルと連動させたい。
コアとなるプログラムを育てたい。
Xperia、CamiApp S、ヤマハマリン横浜クルージング、ScanSnapなどは、ブロガーとして参加させてもらったりもしたので、企業側がどういうことを目的としてイベントを行っているのか、AMNはどうやって売り込んでいるのかw、よく分かりました。
懇親会にも参加させてもらい、さらに詳しい話や想い、難しいところなども教えていただいたりもしました。
登壇者、AMN、参加者の皆様、ありがとうござました。
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